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ARTの注意点

ARTの注意点

ARTとゲノムインプリンティング異常との関連性

ARTとゲノムインプリンティング異常との関連性について説明を受けたことがありますか?

 ここ10年間で欧米では、「顕微授精児の先天異常率が自然妊娠に比べて有意に高い」ことを述べた論文が多数報告されています。日本では そのリスクに関する認知度が低い状況が続いていますが、2011年に厚労省研究班によるART出生児に関する大規模調査の結果、「顕微授精・胚盤胞培養 (長期体外培養) ・胚盤胞凍結保存の人工操作を加えるほど出生時体重が増加する」ことが報告され、徐々にARTに伴うリスクに目が向けられてきています (下部両図参照) 。

 このART児過剰発育の原因は、「ゲノムインプリンティング異常 (遺伝子の働きを調節する仕組みに異常が出る病態) 」である可能性が指摘されています。先天異常を専門とする医師や研究者らも度々に顕微授精や胚盤胞培養のリスクを危惧する研究成果を報告していますが、この極めて重要な問題点に対する認知度が決して高くならないまま今日に至っているのが日本の現況です。

ART出生児に関する大規模調査
出生時体重が増加

ARTリスクマネージメント

ARTの安全評価においては、患者夫婦の背景 (不妊原因、年齢、遺伝因子等) 、排卵誘発法、採卵、体外における卵子・精子取り扱い技術、受精法 (授精法) 、胚培養、胚移植等、多様な因子を考慮しなくてはなりません。

  これまで多くの不妊治療施設では、ARTは安全ですと説明してきましたが、個々の患者夫婦における背景因子、治療内容が多岐にわたり、一律に安全性を論じることは困難です。まだARTのリスクが確定したわけではないので積極的に治療してもかまわないと考えるか、逆に まだARTの安全性に関して不明な点か多いので慎重に治療を行うべきであると考えるか、どのように考えるかは難しい問題です。繰り返し申し上げておりますが、黒田メソッドは後者の考え方に基づいて開発された技術になります。

 私は、まだ因果関係が明確でない事項に関しては、リスクの回避と安全性の向上に努力を惜しまないことが、命を預かる、ましては 命を造り出す生殖医療を専門とする医師の原点であると考えております。当院ホームページで何度も申し上げていますが、ARTのリスクマネージメントとして、黒田メソッドは「できるだけ顕微授精を避ける、もしせざるを得ない時は穿刺注入する精子の品質管理を徹底する」ことを鉄則としています (➡詳細は黒田メソッド) 。

 2010年以降、私は 黒田メソッドを統合的に運用し、最終的に顕微授精回避法 (人工卵管法) による次世代ARTの臨床集積をして参りました。その経験から、顕微授精反復不成功例において 人工卵管による妊娠・出産例を多数得ることができ、新しい技術の有効性を確認することができました。今後はさらに、黒田メソッドが どのくらいARTの安全性向上に寄与できたかを検証して参ります。得られた新しい知見に関しましては、多くの方々に周知し、より安全な不妊治療に対する正しい知識と理解を深めていただく努力も継続して参る所存です。

ARTと「アポトーシス」との関連性について

ARTと「アポトーシス」との関連性について説明を受けたことがありますか?

 多細胞生物では個体をより良い状態に保つために、細胞の一部が積極的に自殺します。その一形態として、管理・調節された細胞の自殺、すなわちプログラムされた細胞死があります。これを「アポトーシス」といい、DNAの損傷を引き起こします。

 精子の一部は、その形成過程で「アポトーシス」を誘発するのです。その結果、DNAが損傷されます。ヒト精子はDNA修復酵素を持っていないため、損傷されたDNAは修復されることなく残留します (➡詳細はヒト精子のDNA修復機構は特殊である) 。もし顕微授精において「アポトーシス」が誘発されたDNA損傷精子が卵子に穿刺注入されると、卵子側のアポトーシス情報伝達系が活性化され、「胚DNA損傷」を誘発する可能性があります。

 ARTの安全性保証において、染色体、DNA の半分を提供する精子の選別は極めて重要であり、DNA損傷精子に関しては、高度な精子分離技術により排除することが不可欠です。さらに体外培養環境の不備も胚DNA損傷を誘発しますので、DNA保護の観点から卵子・胚培養条件も最適化に努めなくてはなりません。

 

 

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