東京都 不妊症 (男性・女性)不妊治療 生殖医療 体外受精 専門 顕微授精 婦人科【黒田インターナショナル メディカル リプロダクション】東京駅よりお越しいただけます。

顕微授精の問題点

顕微授精の問題点について

不妊原因の40%は男性不妊にあり、近年では精子の減少が目立ってきている印象を受けます。一般的に男性不妊の治療法としては、体外受精・顕微授精が広く 行われていますが、体外受精、とくに顕微授精にともなう問題点が正しく認識されているとは言い難い状況があります。そこで、染色体異常のリスクを軽減し、 心身ともに元気な赤ちゃんを授かるために、顕微授精の問題点についてご説明したいと思います。

求められる信頼性の高い情報提供

体外受精や顕微授精などの生殖補助医療技術の進歩により、不妊治療は劇的に変化し、かつては妊娠をあきらめざるを得なかった人でも妊娠できる時代になりました。

その一方で、プライバシーの確保・医学的な説明・精神的なケアなどの不備、専門知識・技術・設備などに施設格差がみられ、なにより科学的根拠(EBM:evidence based medicine)に基づく信頼性の高い情報提供がなされていないという問題点が指摘されています。

顕微授精がもてはやされる裏で…

不妊症は、生殖年齢にあるご夫婦が避妊することなく2年間の性生活を試みても妊娠しない場合、と定義されています。イメージとしてその原因は、女性側に委ねられる傾向にありますが、実際のところは男女半々であり、男性側に不妊原因が認められることも少なくありません

しかも現在では、女性不妊において頻度が高い「排卵障害」に対する治療成績は、血中ホルモン測定技術の精度向上、高純度な排卵誘発剤の開発により、一部を除いて飛躍的に向上してまいりました。

一方、男性不妊の大半を占める「特発性造精機能障害」は原因不明で根治療法がなく、薬が効きにくい薬剤抵抗性です。そこで対症的に、正常形態を有した運動精子一匹を顕微鏡下に卵子に注入して受精を期待する手法、顕微授精(intra-cytoplasmic sperm injection:ICSI)が導入されました

この手法は精子が1匹でもいれば 妊娠可能で、しかも未成熟精細胞を注入しても正常な胚発生が可能とされるなど、ただちにバラ色の世界をもたらすかのような華々しい面が強調されています。しかし、顕微授精はあくまでも対症療法であり、その手法に依存している限り男性不妊の治療成績には限界があります。むしろ、その裏に潜む大きな問題がなおざりにされているように思います。

DNA損傷が存在しない精子の選別が重要

顕微授精の大きな問題点は、“選別された一匹の精子は安全である”と言う認識が定着していることです。

しかし実際には、“ヒト精子の揚合、妊よう性が認められた男性の精液中にも、一部 DNA 損傷精子が混入しており、その頻度は顕微授精の対象となる重度精液所見不良例で高くなります”。つまり、“不妊男性の精子 DNA 損傷比率は高く、顕微授精には危険性をともなう”ということです。そのため顕微授精で卵子に注入する精子の選別に際しては、リスクマネージメントの観点から“DNA損傷が存在しない精子を選別する”ことが臨床応用の前提となります。しかし、現状の注入精子の選別には信頼性の高い学術的な保証・科学的根拠(evidence based medicine:EBM)となる明確な基準は存在せず、“外見的な量的評価(形態、精子数、運動率)のみに着目して選別された一匹の精子 DNAは大丈夫である”と言う認識に留まっているのが実状です。このように、精子機能(DNA 損傷ほか)を考慮しないまま顕微授精に供されているという矛盾点は、臨床上、顕微授精によって出生した児の染色体異常率が自然妊娠に比べて高いことが指摘されている点からも裏付けられます。

顕微授精に用いる精子一匹の選別には、生まれてくる子供の健常性を決定する遺伝情報の半分の責務を担うという意識を強く持たなくてはいけないと思います。

不妊治療の質的向上を目指して

このような、現状の不妊治療が含み持つ諸問題を解決するため、煩雑な治療の現状を見直して、日本における不妊治療の質的向上を目指そうというのが黒田IMRの基本的な考え方です。その改革案の第一歩として、私どもでは“正確な精子の情報に基づいた知識“をつけていただくとともに、”21 世紀の不妊治療においては、子供の人権を考慮した基礎研究に基づいた、安全な高度生殖医療技術を提供するべきである”という大切な概念を、不妊ご夫婦のみならず一般の方にも広く伝えていく必要性があると考えています。そして、この考えを広くして知らしめるため、書籍も執筆しています。

妊娠は不妊治療のゴールではない

最後に、生殖医療の本質は染色体の移植医療であり、決して妊娠が不妊治療のゴールではないことを申し上げたいと思います。流産で淘汰される早発性障害のみならず、児の晩発性障害も含めた長期予後まで見守る姿勢が不可欠です。日本で初めて体外受精児が生まれたのが1983 年、顕微授精児に至っては1992年であり、晩発性障害がいつ発症するかについては未だ不明であることを忘れてはならないと思います。

>>講談社 月刊現代2004年6月号に掲載された記事(PDF 32KB)

関連書籍

不妊治療最前線 -男性不妊の闇に挑む-

不妊症についての基礎的な知識や一般的な問題から、とくに男性不妊の問題を取り上げ、書籍を執筆しています。詳しくは、下記の書籍をご覧ください。

『不妊治療最前線-男性不妊の闇に挑む-』2006年
著者:黒田 優佳子
1,575円

『誤解だらけの不妊治療―治療成功のカギを握るのは「愛」』2009年
著者:黒田 優佳子
1,365円

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